保育園をはじめ、学童クラブ、児童館といった子育て支援施設を運営する、業界最大手の株式会社JPホールディングス様。そのグループ会社である株式会社日本保育サービス様は、全国で約300もの「アスク・GENKIDS」保育園・学童クラブ・児童館を運営しています。
「食育」+「農業」の概念から生まれた「食農教育」の大切さが注目されるようになった昨今。0〜5歳までの幼児や児童が集まる保育園の現場でも、菜園プランター「ベジトラグ」が活用されています。
多彩な学習プログラムを提供する「アスクひばりヶ丘保育園」でのベジトラグ活用の事例を、園長先生、栄養士さんへのインタビューとともにご紹介します。
いま注目される「食農教育」とは?
「食農教育」とは、「食」の基本について学ぶ「食育」をパワーアップさせ、「食」を生み出す根本である「農業」に関する学びも加えた教育のこと。
まず、もととなる「食育」とは、さまざまな経験を通じて「食」に関する知識を学び、また、バランスの良い「食」を適切に選択する力を身に付けることで、健全な食生活を実現できる人間を育てる教育のことです。農林水産省および文部科学省でも、それぞれの定義をもって「食育」をすすめています。
この「食育」に、「食」を支えている「農業」に関する知識や体験の学びを加えた教育が「食農教育」。例えば「作物のタネを播いて、育てて、収穫して、食べる」という一連の流れを体験することなどを通じて、「食」そのものだけでなく、それを支える農家や、生きたものをいただいているということへの感謝の気持ちを育むことを目的としています。
2社の想いが合致し、プログラムがスタート
保育方針のひとつに「五感を養って感性を豊かにします」を掲げるJPホールディングスグループは、「自分たちで植物を育て、収穫して食べる喜びを感じられる食農教育を実現したい」という想いがありました。
そんな時に出会ったのが、「ベジトラグ菜園セット」。
当社としても、単に箱としてのベジトラグを販売するのではなく、土や肥料、育てる植物と育て方のノウハウをセットでお届けすることで、「植物とともにある暮らしをより身近に感じていただき、より多くの幅広い世代の人に広める」ことに貢献する場として、保育園が一つの候補にありました。
両者の想いが一致し、保育園にベジトラグ本体(初回のみ)と土、肥料、野菜やハーブ・花の苗やタネが季節ごとに届くというプロジェクトがスタート。連作障害を防ぐために、使い終えた土を送り返すための「土回収キット」もセットになっていて、植え替えの時期になったら、次の植物とともに新しい土・肥料が保育園へ届くという仕組みです。
実際に保育園では、日々の管理や収穫、収穫後の料理への活用など、さまざまな形での食農教育を行っています。その一例として、東京都西東京市の「アスクひばりヶ丘保育園」でのベジトラグ活用の事例をご紹介します。
子どもたちの手で育てて収穫! 野菜やハーブを給食に活用
ベジトラグを2台導入し、子どもたちと一緒に日々の管理を行っている「アスクひばりヶ丘保育園」を訪れました。
門を入るとすぐ、2台のベジトラグがお出迎えしてくれます。1台には、ハクサイ、オレガノとチャービルがたっぷりこんもり植わっていました。
そしてもう1台は、タネから植えて間もない小松菜が可愛く顔を出し始めたところ。
2021年夏頃に1台目、続いて2022年4月に2台目が設置され、以来、セットで届く野菜やハーブ、花を絶やさず植えて育てています。
園長の仲順明子さんと、栄養士の花田絵里さんにお話を伺いました。
ー 導入当時、ベジトラグをどこに置くかなどはどのように決めたのでしょうか?
仲順:
置き場所は、日当たりがよく、子どもたちや保護者の方々が必ず通る玄関先と最初から決めていました。毎日みんなが利用する場所なので、保護者の方にも日々の変化を見て感じていただけます。行き帰りの時間に、親子でベジトラグの前で足を止めて眺めている姿などを見ては、ここにして良かったと思っています。
ー ベジトラグを日々どのように保育園の活動に生かしていますか?
仲順:
3〜5歳児クラスには苗やタネを植えるところから一緒にやってもらい、5歳児さんには日頃のお手入れも手伝ってもらっています。1〜2歳児さんも収穫のときに参加することもあります。子どもたちも、自分たちが育てて大きくしたものを収穫できる楽しさを感じていると思います。
花田:
育てて収穫した新鮮な野菜やハーブは、給食の食材として大活躍しています。特にピーマンは採っても採ってもなくならないくらいの豊作で、色も緑や赤、オレンジなどカラフルで、子どもたちもとても喜んでくれました。
5歳児のクッキング保育では、収穫したバジルを使ってピザを作ったり、おままごとのように包丁でニンジンを切る練習をしたりもしました。
中順:
口にする以外にも、ハーブの香りを観察したり、にじみ出る汁で色をつける、型を取ってスタンプを作るなど、「自然科学」に触れる機会にも活用しています。
食農教育が実現。親子の話題づくりにも貢献
ー ベジトラグを導入してよかったことは何でしょうか?
仲順:
子どもたちと一緒に育てた食材を、子どもたちと一緒に収穫し、食べるという一連の流れにより、子どもたちは作物が育つ過程を身近で見て体感し、自分で育てたものを食す喜びを味わう、という貴重な体験を重ねています。これはとても良い「食農教育」になっています。何より、ベジトラグに向き合い作業をしている子どもたちは、とても楽しそうです。
それ以外にも、子どもたちと保護者さんの会話の中で自然に植物の話題が出て、お子さんがその日に学んだ植物に関する知識を嬉しそうに保護者の方に話すのを見ると、ベジトラグを取り入れてよかったなと感じます。
ー 大変だったことはありますか?
花田:
家庭菜園の経験がないスタッフがほとんどだったので、植物の植え方、育て方などの知識がない中で、はじめは枯らしてしまう失敗もありました。
仲順:
そういった失敗からの学びも多く、私たちスタッフも日々経験を積んで成長しています。
ー 今後ベジトラグを使って挑戦してみたいことはありますか?
花田:
届くハーブの中には、あまり日常で料理に使ったことがない種類もありますので、活用方法をもっと知りたいと思っています。レシピの幅を広げていきたいですね。
仲順:
野菜やハーブは収穫した後にいろいろと活用できていますが、花は今のところ観賞用になっています。今後は花もアレンジメントなどに活用し、あらゆる形で子どもたちが植物と触れ合える機会を増やしていきたいと思います。
保育園でのベジトラグ活用例をご紹介しました。このベジトラグを活用した食農活動の大きな魅力は、その季節に最適な植物が土や肥料とセットで届くところ。
不要な土を回収する「土回収セット」がついていることで、ガーデニング初心者でも安心して花や野菜、ハーブを育てることに挑戦できます。
仲順さん、花田さん、取材のご協力ありがとうございました。
[取材]ガーデンストーリー